インプラント治療について④~高齢になったとき~
- 2024年11月25日
- 治療
歯磨きのインプラント治療は以前にもお話したように顎の骨に直接の歯根を植える手術です。
多くの患者さんから「自分は高齢だがインプラント治療はできますか?」と質問されることがあります。
結論から言うと年齢はそこまで大きく関係はありません。骨の量と状態と全身的な健康状態によって手術ができるかできないかが決まります。
インプラント治療をした方が年を重ねていったときどの様な変化が起こるのか。何を気をつけたらよいのか、介護やお手伝いをする周りの方が気をつけることなどについてお話したいと思います。
口腔内の変化
年を重ねると口の中では様々な変化がおきます。
・唾液が減る
・細かい手の動きが難しくなり歯磨きがしにくくなる
・口の中の細かい部分が見えにくくなる
・歯肉が下がる
更に高齢になると
・歯科医院に来院することが難しくなる
・自分で歯を磨くことができなくなる
・口の中で違和感があっても気づきにくくなる
歯磨きの時のブラシ圧を弱くすることで歯肉が下がることを少軽減することはできますが、やはり若い方とは差があります。
歯肉が下がると隙間ができ、物が詰まりやすくなるので歯間ブラシやフロスなどが欠かせなくなります。
歯間ブラシを通すと余計に歯肉を押し広げてしまい歯肉が下がる気がするのでやりたくないと言われることがありますがそんなことはありません。
食べ物が詰まりさらに歯肉を押し下げてしまいますので必ず歯磨きの度に歯間ブラシやフロスを使用していただきたいです。
汚れが常に歯肉に付着することにより炎症を起こしてインプラント周囲に感染を起こしてしまいインプラント周囲炎になる可能性が高くなります。
また、個人差はありますが唾液の分泌量も減っていきます。服用している薬の作用で唾液が減ることもあります。
唾液はとても大切で菌の繁殖を抑えたり汚れを洗い流す作用があります。口腔内に入れた食材をまとめて飲み込みやすくする作用もあります。
この唾液が少なくなることも虫歯や歯周病やインプラント感染症になりやすくします。
よく噛んで食事をすること、水分をこまめにとることで口の中の乾燥対策になります。
インプラント治療は手術が成功して普段通りの生活ができるようになっても、メインテナンスは一生必要です。
さらに高齢になると歯科医院への来院も難しくなるかもしれません。そうなると定期的なチェックとプロフェッショナルクリーニングが受けられなく
なります。定期健診は患者さんが自分で歯気づけない初期の異常を発見することができるのでとても大切です。
歯科医院に来院できなくなったり自分で歯磨きできなくなった場合、介護する家族の方や施設の方が口腔ケアをすることになります。
歯科医師や歯科衛生士ではない方が自分以外の歯磨きをするのは抵抗があったりやり方がわからないと思います。
この機会に高齢になった時のケアの仕方を知ることで将来の不安を1つ減らすことができます。
口腔ケアの仕方
・水は必要最低限にする
・一度に全部ではなく何回かにわけてむりなくする
・歯肉や粘膜は優しくふれる
・天然歯とインプラントは構造が違うと頭にいれておく
・歯磨き粉は無理に使用しない
・楽な体勢でおこなう
・歯ブラシだけでなく補助用具を使う
高齢になると嚥下機能や口腔周囲の筋力が弱くなってきます。水は粘度がなくサラサラと流れるので入りむせやすくなります。
頬の内側や上顎に付いた汚れを取ろうとたくさんの水をふくませたりうがいしたりしたくなりますが必要以上の水はいりません。
ガーゼに水を浸したら軽く絞り指に巻き付け口腔内を優しくぬぐってください。
細かい手の動きか難しくなってきたらヘッドの大きめで毛量の多い歯ブラシがおすすめです。一度でより広い範囲の部分をみがくことができますし
細かく向きを変えたりせずに同じ手の動きでみがけます。
長時間同じ体勢や口を開け続けているのが大変な場合は何回かにわけて歯磨きをしていきます。一回の歯磨きで全て完璧にみがけなくても大丈夫で
す。こまめにケアすることで口の中の環境を保つことができます。
インプラントの埋入部位や本数にもよりますが人工歯の部分を外してインプラント上に装着できる入れ歯にすることもできます。
この場合は入れ歯を外して洗浄できるのでケアがやりやすくなります。
ケアのためにインプラントを外してしまいたくなりますが、除去するのにも埋入の時と同じように外科処置が必要となります。
全身的な病気や服用している薬の影響でインプラントを除去することができない場合もあります。
インプラント治療は埋入で(手術して)終わりではありません。
生きているかぎり口腔内のケアはずっと必要です。
今後私たちの寿命は長くなり口から物を食べる期間が長くなることが予想されます。自分でケアできなくなった時は家族の方にケアをしてもらうことになるため、自分自身にインプラントが入っていなくても特性を理解していると安心につながります。
健康寿命(人生の寿命ではなく健康でいられる期間)が長くなれば自分でも口腔内のケアができ、良い状態で口から美味しく食事ができます。
口から美味しく食事がとれるように体と口腔内の両方とも気をつかって生活することはとても重要です。