お口の中にいる菌たち ②
- 2024年7月31日
- お口と歯の情報
前回、口腔内細菌のうち、虫歯の要因になる代表3種類の菌のお話しをしました。
今回は、まず歯周病の要因になる代表菌についてお話ししていこうかと思います。
代表的な「歯周病菌」は3種類あります。
歯周病の「レッド・コンプレックス(最重要歯周病原細菌)」と呼ばれています。
ポルフィロモナス・ジンジバリス菌
「最も歯周病に関わりのある細菌」と言われています。
なんと、日本人の65%以上が感染しているとも言われています。
歯茎の周りの組織に強力に線毛で付着して、増殖すると歯肉の腫れや出血の原因になります。
血液をエネルギー源にして歯周ポケットを深くし、歯肉の炎症を重症化させて膿を出したり、
蛋白分解酵素により骨を溶かして歯の動揺を引き起こしていきます。
根尖性歯周炎の悪化にも関与していると言われています。
ほんの少し存在するだけで、細菌フローラを悪玉菌の多い傾向に変化させてしまうという特徴もあります。
歯周病独特の悪臭の元となる内毒素を出す事も分かっています。また、この菌から出される毒素が
血糖値を上げる作用を持っていて、血栓を作りやすくする事もあるそうです。
口腔内以外では、気道・結腸・上部消化管にも生息しています。
トレポネーマ・ディンディコラ菌
免疫抑制作用に関係しているとされています。
歯周病のなかでも、特に重度に進行されている方に検出頻度が高いようです。
エネルギー源はポルフィロモナス・ジンジバリス菌と同じく血液で、
主に根尖性歯周炎の悪化に関与しています。
この菌は運動能力がとても高く、血管内にも入り込んで増殖することができ、デンティリジンという酵素を出して
炎症を引き起こし、歯肉から出血しやすい状態をつくります。
白血球などの免疫から逃れる機能を持っている、少し厄介な細菌でもあります。
口腔内以外では、心臓冠状動脈疾患部や動脈瘤から検出されることもあります。
タネレラ・フォーサイシア菌
上記の2種(ポリフィロモナス・ジンジバリス菌とトレポネーマ・ディンティコラ菌)
とともに、歯周病や根尖性歯周炎を悪化させるおそれがあるとされています。
内毒素を持ち、蛋白分解酵素も作ります。
酸素に非常に弱い性質を持つものの、お口の中ではとても活発で、
様々な毒素を出して歯周病を引き起こします。
その他の歯周病菌
他にも、
アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス
顎の骨が急速に破壊されてしまう、侵襲性歯周炎に関係していると言われる細菌です。
プレボテラ・インターメディア
女性ホルモンの変化で発症しやすくなる、妊娠性歯周炎に関係している細菌です。
などの特定の歯周病に関連する菌も存在します。
歯周病菌の特徴・性質
歯周病菌の特徴・性質は、
① 毒素を出す。
② 血液をエネルギー源にする(好む)。
③ 空気(酸素)が苦手。
空気に触れると死んでしまうので、空気に触れないような環境で生き延びようとします。
具体的にいうと、空気に触れても平気な細菌が作った塊の中の、空気に触れない環境で増殖していきます。
つまり、歯周病菌単体では長く生きられない。という事になります。
一般的には、歯の表面に、たんぱく質の膜(無害)が出来る事から始まり、
まずは普通の菌が増えていきます。
細菌が塊を形成すると、空気に触れないその内部で歯周病菌がどんどん増えていきます。
結果、歯周病を引き起こしていきます。
予防と対策
悲しい事に、歯周病菌は現在の科学では完全に排除する事ができません。
「プラークコントロール」と聞いた事がある方もいらっしゃるかも知れませんが、
細菌の塊(プラーク・歯垢・バイオフィルム)を作らせないという事が大事になります。
細菌が成熟してしまう前に、早期に破壊し取り除くという意味で、単純に「歯磨き」をすれば良いという訳ではなく、
例えば砂糖の入ったものをよく食べたり、間食が多かったり、寝る前に食べたりする方は、食生活の見直しだったり、
歯間ブラシやフロスを使っていない方は、使うようにして頂いたり・・・
更には、どんな方でも、100%磨き残りを作らないという事はとても難しい事ですので、定期的に
歯科医院でクリーニングを行ったり、磨き残してしまいやすい部位、磨き方の癖をチェックしたりして頂く事が
とても重要で、これらが歯周病の予防に繋がっていきます。
なかなか、人間「毎日」何かを続けるというのは難しくなりがちです。
特に歯周病は痛みを伴わずに進行していきますので、自覚もないまま・・という事が少なくありません。
結果、病原菌の数は少ないのに、罹患者数は多いという結果を引き起こしています。
まずはお時間のある時に歯ブラシだけでなく、フロスや歯間ブラシなど使ってみる事から予防を始めて頂けたらと
思います。