お口の中にいる細菌たち ①
- 2024年6月22日
- お口と歯の情報
人間の体には「常在菌」と呼ばれる、常に共存している細菌が存在しています。
今回は、そんな、皆さんのお口の中に存在する細菌のお話をしようかと思います。
口腔内細菌
お口の中に存在する菌は「口腔内細菌」と総称されます。
いったい、どのくらいの数存在すると思いますか?
ご存じの方もいらっしゃるかも知れませんが、胎児は「無菌」状態で、赤ちゃんは口腔内細菌を持たない状態で
産まれてきます。
赤ちゃんは生後2か月頃から、発達の過程で様々なものを口にしてしまいます。
これは哺乳反射と言うそうですが、視覚や触覚よりも舌やお口周りが発達しているからだそうです。
そしてこの時期になると、手足を活発に動かすことが出来るようになり、様々なものが手に触れ、そのままその手や、
触れたものをお口に入れてしまうような事が増えていきます。
家族からのみではなく、こういった事から少しずつ、お口の中に菌を取り込んでいき、だいたい3歳ころまでに
口腔内細菌のバランスが決まると言われています。
最終的には、人間のお口の中には300~700種類。また、プラーク(歯垢)1g中には、1000億個存在すると言われて
います。
これらの菌は、主にお口の中の粘膜・舌・歯のみではなく、歯肉溝と呼ばれる歯と歯肉の間にある隙間に幾つかの
菌種の集まりである「口内フローラ(口腔内細菌叢)」と言われるコミュニティーを形成します。
口腔内細菌は、口内フローラのバランスが良い状態では外部から入ってこようとする微生物の定着を防いでくれる
役割をしてくれます。
また、日々の歯磨きや、唾液の洗浄・抗菌作用で通常は口腔内細菌の過剰な繁殖は抑えられています。
逆に何らかの事情で免疫力が低下していたり、清掃状態が悪くなってしまうと口腔内細菌の繁殖がはじまり、
口内フローラのバランスが崩れ、むし歯や歯周病など、様々なリスクを引き起こします。
口腔内細菌の種類
主な口腔内細菌は6種あります。
それぞれ、むし歯の要因になる菌・歯周病の要因になる菌の代表的な3種ずつに分類されます。
むし歯の要因になる代表的な菌
① ミュータンス菌
多くの場合、虫歯菌というと、この菌の事を意味しています。
元来、お口の中に存在する菌ではなく、ミュータンス菌に感染した人が使った食器や箸、スプーンなどを使ったりする
事で感染するといわれています。
糖質(主に砂糖)を原料に不溶性グルカンという粘着性物質を作り、歯の表面に付着する性質があります。
逆に砂糖のない環境では、歯の表面へ付着する力は低く、他の菌とかたまりになることもできません。
② ソブリヌス菌
近年発見された虫歯菌の一つです。
酸素や糖がない環境下でも、虫歯の原因となる酸を作り出す事が出来ます。
ミュータンス菌以上に、歯に付着するための不溶性グルカンを形成する性質があり、
ミュータンス菌だけを保持しているよりもソブリヌス菌も保持している人のほうが虫歯になりやすい事が
分かっています。
③ ラクトバチルス菌
虫歯の原因となる強い酸を作り出し、虫歯を進行させます。
表面がツルツルした歯には付着しにくいのですが、他の菌達が作り出した不溶性グルカン表面に付着し、
虫歯の進行とともに増殖していくと言われています。
主に、ミュータンス菌やソブリヌス菌が自身で作り出した不溶性グルカンにより歯の表面に付着する事で、
他の多くの細菌が不溶性グルカンに付着していき、プラーク(歯垢)を作ります。
歯垢の付着時間が長くなる事で、これらの菌達は砂糖を分解して「酸」を作り出し、歯の表面を溶かし、
虫歯となります。
つまり、虫歯は、口腔内細菌が食べかすを栄養とし、酸を作り出すことで歯が溶けていく状態を指しています。
長くなってきましたので、次回歯周病の要因になる代表的な菌について書いていこうかと思います。